【2026年施行】法定養育費とは?令和6年民法改正のポイントと茨木市でできる備え
「いばらき法律事務所」弁護士の横山耕平です。
当事務所のホームページをご覧いただき、ありがとうございます。 このサイトは、食品の「成分表示」のように、皆様に弁護士の人となりや、事務所のスタンス、そして法的な解決のヒントを分かりやすくお伝えするために開設いたしました。
今回は、離婚後の生活に大きな安心をもたらす「令和6年改正民法の法定養育費」について、新たなスタートの季節に合わせてお話ししたいと思います。
令和6年民法改正で変わる!「法定養育費」と離婚後の生活
もう1ヶ月もすれば新年度を迎え、桜が美しい季節となるでしょう。茨木市内の桜通りも満開を迎え、新しい生活の始まりを予感させるのでしょう。しかし、そんな時期は生活環境の変化に伴い、ご家族のあり方や離婚について深く悩まれる方が増える時期でもあります。
離婚を考える際、最も大きな不安の一つが「子どもの養育費」ではないでしょうか。「相手が話し合いに応じてくれない」「約束しても払ってくれるか不安」……。そんな悩みを抱える方にとって、今回の民法改正は大きな「希望の光」となる内容を含んでいます。
1 話し合いができなくても安心?「法定養育費」の誕生
これまでは、離婚時に養育費の取り決めをしていなかった場合、改めて協議や調停を行う必要があり、実際に受け取るまでに大変な労力と時間がかかっていました。
しかし、今回の改正によって新設される「法定養育費」という制度は、画期的です。 改正法により、離婚時に養育費の取り決めがなくても、子を監護する親は他方の親に対して、一定額の養育費を「法律上の根拠に基づいて請求できる」制度が新設されます。これは、いわば国が定めた「最低保証」のようなものです。
「相手が怖くて養育費の話を切り出せないまま離婚してしまった」という場合でも、この制度があれば、子どもの生活を守るための最低限の資金を確保できる道が開かれます。これは、立場の弱い方を守る強力なセーフティーネットと言えるでしょう(※1)。
2 「逃げ得」を許さない!回収を強力にする「先取特権」
もう一つの大きな改正点は、養育費の回収がしやすくなることです。 これまでは、養育費が未払いになっても、相手の給料を差し押さえるためには、裁判をして判決を取るか、公正証書を作っておく必要がありました。
改正後は、養育費の一部について「先取特権(さきどりとっけん)」という強力な権利が認められます。これにより、一定の条件を満たせば、裁判などの長い手続きを経なくても、相手の財産から優先的に支払いを受けられる可能性が高まります(※2)。 また、相手の勤務先や預貯金口座がわからなくても、裁判所を通じて情報を取得し、スムーズに差し押さえができる仕組み(ワンストップ化)も整えられます(※3)。
3 茨木市にお住まいの皆様へ:今できる「賢い備え」
この新しい法律が実際にスタートするのは2026年(令和8年)4月1日からです(※4)。 「じゃあ、今はまだ関係ないの?」と思われるかもしれませんが、そうではありません。これから離婚を考えている方、あるいは既に離婚協議中の方こそ、この改正を見据えた準備が必要です。
特に、私たちがいばらき法律事務所を構えるここ茨木市には、ひとり親家庭を支える素晴らしい制度があります。 たとえ法律が変わっても、やはり一番確実なのは、離婚時にしっかりとした「公正証書」を作っておくことです。茨木市では、この「養育費に関する公正証書作成費用」を補助する制度があるのをご存知でしょうか(※5)。
改正法で「法定養育費」ができるからといって、個別の事情に合わせた適正な額の取り決めが不要になるわけではありません。しっかりとした合意書を作りつつ、万が一の時は新しい法律の力も借りる。この「二段構え」が、お子様の未来を守る最強の盾となります。
最後に
法律は、難しくて冷たいもののように感じるかもしれません。しかし、今回の改正のように、皆様の生活を支える温かい「成分」もたくさん含まれています。
「私の場合はどうなるの?」そんな疑問をお持ちの方は、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。地図を広げて目的地を探すように、解決への道筋を一緒に見つけましょう。
【用語解説】
(※1)法定養育費の金額と仕組み 改正民法766条の3により導入されます。離婚時に取り決めがなくても、子を監護する親は他方の親に対し、法務省令で定められる「一定額」の支払いを請求できます。現時点での議論では、子ども一人あたり月額2万円程度が想定されていますが、これはあくまで暫定的な「最低限の額」であり、本来は双方の収入に応じた適正額を取り決めることが望ましいとされています。
(※2)先取特権(さきどりとっけん) 改正民法306条・308条の2。養育費(子の監護費用)について、一般の債権者よりも優先して弁済を受けられる権利です。これにより、公正証書などの「債務名義」がない私的な合意文書(覚書など)であっても、一定の要件(金額や支払時期が記載されていること等)を満たせば、将来の養育費について相手の財産を差し押さえる手続きに進めるようになります。
(※3)執行手続きのワンストップ化 これまでは「財産開示手続き」と「差押命令の申立て」を別々に行う必要がありましたが、改正により、1回の申立てで相手の預貯金や勤務先情報を取得し、そのまま差し押さえまで行えるようになります。これにより、「相手の職場がわからないから諦める」という事態が大幅に減ることが期待されます。
(※4)施行日と経過措置 この改正法は2026年(令和8年)4月1日から施行されます。「法定養育費」は施行日以降に離婚したケースに適用されますが、「先取特権」については、施行日前に取り決めた養育費であっても、施行日以降に支払期限が来る分については適用される見込みです。
(※5)茨木市の養育費確保支援事業 茨木市では、ひとり親家庭等の自立を支援するため、養育費に関する公正証書等の作成にかかる費用(公証人手数料など)を全額(上限あり)補助しています。また、保証会社と契約する際の保証料の補助も行っています。改正法の施行を待たずとも、今すぐ利用できる強力な支援制度かもしれません。