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売掛金の回収にお困りの下請事業者の方へ―下請法違反となる「長期手形サイト」の最新対策

みなさん、こんにちは。いばらき法律事務所の弁護士横山耕平です。当事務所では、安心してご相談いただけるよう、いわば法律事務所の「成分表示」として、実際の解決事例や法制度の最新情報をわかりやすく発信しています。

今回は、多くの中小企業・下請事業者が直面する「売掛金回収」の中でも、見落とされがちな長期手形サイトの問題と、2024年以降の行政指導の動きについて解説します。

1.問題となる「長期手形サイト」とは

元請から手形で支払われる取引は依然存在しますが、支払サイトが4〜5ヶ月(120〜150日)に及ぶ場合、下請法上の問題が生じます。とくに、60日超の設定は明確な違反(支払遅延)となる可能性が高く、行政の是正指導対象となります。

下請法の「60日ルール」

親事業者は、物品の給付・役務提供の受領日から60日以内の「できる限り短い期間」に支払期日を定め、期日までに全額支払う義務があります(注1)。「検収に時間がかかる」などの主張は、60日超を正当化する理由にはなりません。

2.下請法の適用要件と資本金基準

下請法の保護を受けるには、取引類型と資本金基準を満たす必要があります(注2)。

取引類型には「製造委託」「修理委託」「情報成果物作成委託」「役務提供委託」などが含まれます。また、資本金基準は、下記の表の通りです。

区分親事業者(元請)下請事業者(下請)
パターン①資本金3億円超の法人3億円以下の法人または個人
パターン②資本金1,000万円超〜3億円以下の法人1,000万円以下の法人または個人

3.最新の行政指導による規制強化(2024年以降)

公正取引委員会・中小企業庁は、サプライチェーン全体の資金繰り改善の観点から、手形取引の運用基準を一層厳格化しています。60日超サイトの手形交付は、運用基準に基づく行政指導や、違反時の勧告・公表(下請法6条)の対象となることが明確化されています(注3)。

なお、改正により下請法は将来的に「下請等取引公正化等法」へ名称変更予定です(公布済・施行待ち)。

4.長期サイトへの対抗策と下請事業者の権利

(1)年14.6%の遅延利息を請求できる

親事業者が支払期日までに代金を支払わない場合、年14.6%の遅延利息を支払う義務があります(注4)。起算点は、支払期日の翌日(期日未設定の場合は給付受領日から60日経過後)から支払日までです。消滅時効は原則5年のため、過去分の請求は期間管理が重要です。

(2)匿名で行政機関に申告できる

報復リスクを避けるため、中小企業庁や公正取引委員会のサイトにある匿名の「違反行為情報提供フォーム」が利用できます。また、全国の下請かけこみ寺も活用できます。取引関係を悪化させることなく、行政の是正指導を促す実効的な手段です。

5.茨木のご相談をお考えの方へ

長期手形や支払遅延の放置は、運転資金を圧迫し、連鎖倒産リスクを高めます。弁護士は、違反判定→遅延利息算定→行政対応/民事請求の戦略立案まで専門的知識でご助言ができます。気軽にご相談ください。

脚注・参考

  1. 注1:下請代金支払遅延等防止法 第2条の2(「60日以内」「できる限り短い期間」)。
  2. 注2:同法施行令 第1条(資本金基準)。取引類型は製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託 等。
  3. 注3:同法 第6条(勧告・公表)。行政指導の実務は「下請法運用基準(公正取引委員会・中小企業庁)」に基づく。
  4. 注4:同法 第4条の2(遅延利息 年14.6%)。起算点は支払期日の翌日(期日未設定時は給付受領日から60日経過後)。

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