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巧妙化する「特殊詐欺」からあなたの大切な財産を守るために

いばらき法律事務所の弁護士横山耕平です。

近年の特殊詐欺の手口は非常に巧妙化しています。大切なご家族やご自身の財産が狙われるケースが後を絶たないようです。特に、高齢者をターゲットとした詐欺被害の報告が多く、不安を抱えている方もいらっしゃるでしょう。今回は、その手口の最新傾向と、万が一被害に遭ってしまった場合の法的対応についてご説明したいと思います。

1 巧妙化する詐欺の手口と被害の現状

特殊詐欺の中でも、近年は「キャッシュカード詐欺盗」や、公的機関職員(警察官、役所職員、金融機関担当者など)を装う手口が多いようです。この「キャッシュカード詐欺盗」は、警察庁では特殊詐欺の一類型として扱われていますが、刑法上は窃盗罪(刑法235条)に該当します。詐欺師は、「あなたのカードが不正利用されています」「還付金の手続きが必要です」などと電話をかけ、不安や焦りを煽ります。特に危険なのは、自宅に訪問し、被害者の目の前でキャッシュカードをすり替えたり、暗証番号を聞き出したりする手口です。被害を防ぐためには、「自分は大丈夫」という過信を捨て、常に警戒心を持つことが大事です。

2 被害を未然に防ぐための3つの鉄則

(1)すぐに答えない

電話で金銭や暗証番号を要求されたら、すぐに答えず、必ず家族や周りの人に相談するか、警察相談専用電話(#9110)に連絡してください。公的機関が電話で暗証番号を聞いたり、自宅にカードを取りに行ったりすることはありません。

(2)留守番電話を活用する

留守番電話機能を常に設定しておくことで、詐欺師との接触自体を避けられます。詐欺師は、録音されることを嫌います。

(3)口座の管理を徹底する

通帳やキャッシュカードを他人に譲渡・売却することは、犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)第28条第2項により禁止されており、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科せられる可能性があります(※1)。口座が犯罪に悪用されれば、ご自身も責任を問われるリスクがあります

3 万が一振り込んでしまった場合の法的な対応(被害回復)

もし詐欺だと気づかずお金を振り込んでしまった場合は、迅速な行動が被害回復の鍵となります。

(1)迅速な連絡:警察と金融機関への通報

被害に遭ったことが分かったら、速やかに以下の2箇所に連絡してください。
ア 警察:緊急性の高い場合は110番、それ以外は警察相談専用電話#9110へ。
イ 振込先の金融機関:連絡することで、犯人が利用した預金口座の取引停止措置が講じられる可能性があります。

(2)被害回復の法的手段:「振り込め詐欺救済法」の活用(※2)

通称「振り込め詐欺救済法」により、犯罪に利用された口座に残っている残高を原資として、被害者に対し「被害回復分配金」が支払われる可能性があります。
公告の日から60日以内に金融機関へ申請書を提出する必要があります。

(3)弁護士に相談するメリット:重過失リスクへの対応

キャッシュカード詐欺盗の手口では、預金者保護法(※3)が適用されます。盗難カード等による不正払戻しの場合、原則として被害額の補てんを請求できますが、預金者に重大な過失があると証明された場合は補てん請求はゼロ(免責)となります。過失がある場合でも補てん額は最大4分の3までに制限されます。

犯罪の手口は常に姿を変えていますが、基本的な警戒心と法的な知識があれば、被害を大きく減らすことができます。お困りの際は、弁護士にご相談ください。当いばらき法律事務所もお力になれればと思います。

※1 口座の売却・譲渡と犯罪収益移転防止法
金融機関の預貯金通帳やキャッシュカードを他人に譲渡することは、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(犯収法)第28条第2項により禁止されており、1年以下の懲役または100万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。

※2振り込め詐欺救済法の概要と手続き
正式名称は「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」です。犯罪に利用された疑いのある口座を凍結し、残った資金を原資として被害者に分配金を支払う仕組みです。

※3 キャッシュカード詐欺盗と預金者保護法上の「重大な過失」

正式名称は「偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律」です。キャッシュカードを欺かれて盗取された事案には、この法律が適用されることがあります。過失が証明されれば補てん額は最大4分の3までに、重大な過失が証明された場合は補てんがゼロ(免責)となります。判例では、警察官をかたる者に対して暗証番号を知らせたうえ、玄関先にカードを置いたままにした80歳代の被害者につき、「わずかの注意さえすれば結果をたやすく予見できた」として、故意と同視し得る著しい注意欠如の状態、すなわち「重大な過失」を認定し、金融機関への請求を棄却した事例があります。暗証番号を教える行為やカードを安易に他人に渡す行為は、重過失が認定されるリスクがある点に注意が必要です。

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