無効を防ぐ!「自筆証書遺言」作成の要件と最新の利用術
当事務所のウェブサイトをご訪問いただき、誠にありがとうございます。このブログでは、皆様の法的トラブルの解決に役立つ情報、特にご自身の意思を明確に残すための「自筆証書遺言」の作成について、茨木の皆様へ向けて、弁護士としての視点からアドバイスを提供いたします。
暑かった夏もようやく終り、落ち着いてご自身の将来やご家族について考える時間を取られている方もいらっしゃるかもしれません。このような時こそ、万が一に備えた相続対策、特に「遺言書」の作成を検討されることをお勧めします。
遺言書は、亡くなった後に誰にどの財産をどれくらい残すかを記す大切な文書です。特に「自筆証書遺言」は、費用がかからず、ご自身一人で手軽に作成できるというメリットがあります。しかし、手軽さゆえに形式的な不備が生じやすく、無効になってしまうケースが多いという大きなデメリットも抱えています。
せっかく残した遺言書が原因で、残されたご家族の間で「争族」が起きることを防ぐためにも、遺言書作成の際は、法的な要件を厳守することが非常に重要です。
◆ 無効にならないための自筆証書遺言の5つの要件
民法上の方式と異なる方法で作成された遺言は無効となりますが、自筆証書遺言で無効になりやすい方式の不備を避けるために、以下の5つの要件を守りましょう。
- 全文自筆で書くこと: 原則として遺言書の全文を自筆で書かなくてはなりません。ただし、2019年の法改正により、財産目録についてはパソコンで作成したものや、通帳のコピーなどを添付することが認められました。ただし、自筆以外の財産目録を添付する場合は、すべてのページに署名押印が必要です。
- 作成年月日を正確に記入すること: 「2025年4月1日」のように、日付を正確に記載する必要があります。「2025年4月吉日」など日付が特定できない場合、遺言書は無効となります。
- 署名押印をする: 遺言書には必ず署名と押印をしましょう。印鑑は認印でも構いませんが、実印を用いるほうがより証拠能力が高まります。
- 訂正する場合は全文書き直すこと: 遺言書を訂正する際には細かなルールが定められており、修正液の使用などは誤った方法として遺言書全体が無効になるリスクがあります。修正箇所がある場合は、全文を書き直す方が安心です。
- 戸籍上の氏名を記載すること: 相続トラブルを避けるためにも、戸籍上の氏名で署名するようにしましょう。
◆ 最新の制度:「自筆証書遺言書保管制度」の活用
自筆証書遺言の最大のデメリットであった、「紛失・改ざんの可能性」や「発見後の家庭裁判所による検認が必要」という点を解消するために、2020年7月より「法務局の自筆証書遺言書保管制度」がスタートしました。
この制度を利用すれば、法務局が遺言書の原本と画像データを保管してくれるため、紛失や改ざんのリスクを回避できます。さらに、家庭裁判所での検認の手続が不要となり、すぐに相続手続を開始できるのも大きなメリットです。形式的な不備についても、保管時に法務局でチェックを受けられるため、無効となる可能性がなくなります。
◆ 遺言能力と早期作成の重要性
遺言書が形式的に正しく作成されていたとしても、遺言者が高齢で理解能力が低下している場合、遺言能力が問われ無効と判断されるケースがあります。遺言能力とは、「遺言の内容とその結果を理解できる力」を指します。
認知症の診断を受けていても必ずしも遺言が無効になるとは限りませんが、有効・無効を巡って相続人同士が争うリスクを避けるためにも、遺言能力に疑いのない状態で遺言書を残しておくことが非常に大切です。
◆ 最後に
ご自身の意思が確実に実現され、残されたご家族が争うことのないよう、遺言書作成にあたっては、形式面だけでなく内容面についても弁護士などの専門家にご相談いただくことを強くお勧めします。専門家であれば、形式不備による無効を回避できるだけでなく、遺留分に配慮したトラブル回避につながる遺言書を作成できます。
茨木市および近隣地域の皆様の、遺言作成や相続に関するご相談を承っております。お客様のご不安を解消し、適切な解決策を一緒に考えてまいりますので、どうぞ気軽にお問い合わせください。